名古屋社労士事務所ニュース vol.887
■ 不当な低賃金に通報窓口 建設業待遇向上へ、27年度
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国土交通省は、事業者からの賃金が不当に低い場合、現場で働く建設技能
者の通報を受け付けるオンライン窓口を2027年度中に試験導入する。通報を
基に問題が見つかれば、事業者には改善を求める。昨年6月に成立した建設業
関連の改正法に基づき、26年度中にシステム開発に着手する。情報は関係機
関に送られ、国交省の「建設Gメン」などが、雇い先の建設事業者が見積も
り段階で適正な労務費を計上しているかどうかや、実際に支払う賃金額など
を調査。問題が見つかれば指示や勧告を出す。
一般的に、賃金の未払いや最低賃金を下回る支払いといった明確な法令違
反がなければ、労働基準監督署が現場に介入するのは難しい。一方、新設の
窓口は、政府が技能者の適正な賃金基準として定める「標準労務費」を下回
る場合が対象となるため、幅広い対応が可能になるという。
■ 700万人が最低賃金近くに 中小は5人に1人 10年で3倍
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厚生労働省の中央最低賃金審議会は22日、2025年度の最低賃金額の目安を
決める小委員会の第2回会議を開いた。春季労使交渉の賃上げ率も踏まえると、
最低賃金の目安額は全国平均で1100円台前半での攻防となる。
厚労省は最低賃金を議論する時期にあわせ、受け取っていた時給が引き上
げ後の最低賃金の金額を下回っていた労働者の割合を影響率として算出し公
表する。従業員30人未満(製造業は100人未満)の中小・零細企業について
24年度の影響率は23.2%となった。前年度より1.6ポイント上昇した。従業員
が5人以上の事業所全体では8.8%で、同じく前年度より0.7ポイント上昇した。
中小・零細企業では現在、5人に1人以上が最低賃金に近い水準で働いてい
る。中小・零細における影響率は10年前の14年度は7.3%だったが、10年間で
3倍以上に急拡大した。20年前の04年度はわずか1.5%だった。
■ 人的資本の有報開示を一本化 成長戦略とセットで記載 金融庁
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金融庁は人的資本に関する有価証券報告書の開示様式を改める。従業員数
や勤続年数などを記載した項目と、サステナビリティー関連で取り上げてい
る労働環境や人材育成の項目などを一本化する。形だけの開示になっている
事例も散見されるため、成長戦略と関連づけて記述することを求める。23年
3月期から開示が導入された女性管理職比率や男女の賃金差についても人的資
本の記載項目に集約する。金融庁は2025年内に有報の記載事項を定める内閣
府令の改正案を公表し、パブリックコメントを経て施行する。3月期決算の企
業は、26年提出の有報から新しい様式での開示が求められる見通しだ。
例えば、人工知能(AI)活用を目指す企業はデジタル人材の確保や従業員
のリスキリング計画といった具体的な方針を記載することなどが想定される。
単年度の実額しか開示義務のなかった従業員の平均給与についても、増減率
の記載を義務づける。役職員に付与しているストックオプション(株式購入
権)の状況や役員報酬についても成長戦略と関連づけて記述することを求め
る。
【名古屋社会保険労務士事務所】